DML30系エンジン wikipedia|無料辞書
◆ 概要
型式名のDMは
Diesel
Motorの略、Lは12気筒を意味し(Aを1、Bを2…の意味に置き換えると12はL)、30は総
排気量(
リットル)である。末尾のHは横型機関 (
Horizontal) を、Sは
ターボチャージャーを意味し、それに続くアルファベットは改良順にA、B…となる。
国鉄の気動車用エンジンは、大別すると
DMH17系と、このDML30系(大出力形)/
DMF15系(小出力形)エンジンに分けられる。後者のDMF15系は前述の通りこのDML30系エンジンの基本となったもので、両者はシリンダの摩耗部品や各種補機を中心として、相互の部品互換性を持つ。
◆ 構造
DMF31系エンジンが、シリンダ径も行程も共に過大で気動車の床下に横置き搭載するには問題が多かったことを教訓として、実績のあるDMH17系の設計・構造から大きく離れることを避けて計画・設計された、保守的な設計のエンジンである。
このため、最初に試作されたDMF15HSでは、DMH17系と同じピストン行程(160mm)を踏襲しつつシリンダ直径を10mm拡大(130mm→140mm)して1気筒あたりの排気量を約8%増大、さらに定格回転数を100rpm引き上げて(1,500rpm→1,600rpm)
ターボチャージャーにより過給を行い
[DMH17系はターボ過給器が一般的ではなかった時代に設計されたため後付でのターボ過給化が難しく、機関車用の縦型機関であるDMH17SBで300PSを実現したものの気動車用横置き機関への適用は困難であった。なお、これらDMH17系ターボ過給モデル各種での性能増加状況を考慮すると、本系列は各シリンダの燃焼効率という観点においては、DMH17系と比較してさほど大きく変わっていないことが見て取れる。]、各シリンダ単体の出力を引き上げることでシリンダ数の削減を図り、バランスの良い直列6気筒構成を実現している。
本系列はこのDMF15HSを2台向かい合わせに組み合わせてクランクシャフトを共有とし、バンク角180度のV型12気筒とすることで出力の倍増と軽量化[DMF15系が自重2.5t前後とより気筒数が多く排気量も大きいDMH17系と比較して約1tの自重増となったのに対し、本系列はクランクシャフトの共通化などにより自重3.5t前後に収まっている。]を図ったものである。
その設計方針は単純・堅牢・廉価を狙いつつ新技術の導入を図ったとされ、1バンク6気筒のシリンダヘッドを3気筒ずつひとまとめにすることで消耗品であるガスケットを1枚で済ませるなど保守の容易化に留意した構造が採用され、またエンジン本体と付属圧縮機の一体化による潤滑油の共通化をはじめとして各種補機の設計にも工夫が凝らされていた。
もっとも、DMH17系エンジンでも問題となった排気管の焼損・発火問題を抑止するため、ターボ過給器による過給については姉妹機種であるDMF15HZとは異なり中間冷却器を付加できず、1バンクにつき1基ずつ計2基の
石川島播磨重工業製TB15ラジアル形ターボ過給器
[最高許容回転速度50,000rpm、機関定格点での回転速度41,600rpm、圧力比1.28。]を搭載するに留められている。
◆ 運用状況
国鉄は当初、DMH17系に代わるエンジンは300PS級のDMF15系が妥当なのか、それとも500PS級の本系列が妥当なのか、どちらとも決めかねていた。そこで実際にこれらの機関を搭載した車両を試作し、長期試験を実施することとした。それが
キハ90系である。
1966年(昭和41年)、300PSのDMF15HZAを搭載したキハ90形と、500PSのDML30HSAを搭載したキハ91形が各1両製造され、千葉地区など各地で性能試験が行われた。これらでの試験の結果、今後の優等列車用国鉄気動車では500PS級機関を1基搭載することになり、翌年には営業列車での長期実用試験を行うため、DML30HSBを搭載したキハ91形量産試作車7両と、走行用エンジンを搭載しないキサロ91形が3両製造され、急行「しなの」などで長期実用試験が開始された。
だが、1968年の白紙ダイヤ改正で計画された非電化区間優等列車の速達化プランを実施に移すには、キハ90系試作車での長期試験の結果を待つ時間が残されていなかった。このため国鉄当局は試験結果を待たずに
食堂車を除く全車に500PS級のDML30HSCエンジンを装備した
キハ181系を製造、
1968年(昭和43年)10月1日のダイヤ改正から特急に格上げされた「しなの」で営業運転を開始した。
こうして本格的な量産にゴーサインが出された本系列であるが、その設計は様々な問題点を内包していた。
まず、保守の容易化を狙って採用された3シリンダー1ヘッド構成は、過酷な「つばさ」運用へ充当されていたキハ181系搭載分を中心に、ガスケットのボルト締め付け力の不均等によると見られる吹き抜け現象が多発し、本系列のアキレス腱となった。これはガスケットの設計変更を繰り返し、出力のデチューンを行うことで一応の解決が図られたが充分ではなく、キハ66・67系用として設計されたDML30HSH以降では3シリンダ3ヘッド構成としてガスケットをそれぞれに組み付ける従来の設計に戻すことで対処せざるを得なかった[これにより、各シリンダの間隔を拡幅する必要が生じ、DML30HSE以前のモデルとの寸法面での互換性は失われた。]。
また、設計の効率化や合理化を目的として新設計が導入された補機にもトラブルが続出した。特に先に挙げた機関本体と圧縮機の潤滑油共通化設計は、機関の高温環境に曝された潤滑油が変質してゼリー状となり圧縮機の弁に固着する、といった深刻なトラブルを誘発し、これも潤滑油の供給系統を分割し従来と同様の設計とすることで対処が図られている。
さらに、DMH17系の段階で排気マニホールドの過熱による発火を防止するため、機関の全力運転時間を5分に制限する必要があったにもかかわらず、根本原因である気筒内の燃焼効率を改善し排気温の低下を図ることなく、ほぼそのままの構造で出力向上を図った結果、本系列[直噴化された一部の後期モデルを除く。]における機関発熱は当初の想定を超える過大なものとなった。
本系列の基本設計が行われた1960年代初頭には、既に燃焼効率が良く排気温を低く抑えられる直噴エンジンの開発が、主として経済性を重視して
トラック用ディーゼルエンジンを中心に進められており、日本でも
いすゞ自動車と
日野自動車が1950年代末頃からその開発に着手していた
[いすゞ(D920)、日野(EA100)の両社共に直噴エンジンの市販化は1967年。]。このような状況下で、国鉄技術陣が直噴式を検討せず予燃焼室式に固執した理由は明らかではない
[そもそもDMH17の原型機の一つである三菱重工業8150は直噴式であった。また、本系列が設計されていた時期には既に気動車用として使用可能な直噴機関が量産製品として存在しており、例えば台湾鉄路管理局へ1967年に納入されたDR2700形(東急車輌製造製)はカミンズの標準品の一つであるHR-6系エンジン(直列6気筒、直噴、排気量12.2l)のバリエーションモデルであるNHHRTO-6-B1(出力335PS)を搭載していた。]が、結果としてこれは本系列における不具合頻発の一因となった。
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