レイチェル・カーソンのこの著作は、あまり知られていなかったDDTの残留性や生態系への影響を公にし、社会的に大きな影響を与えているが、執筆から40年以上経過した現時点の最新の科学的知見から見ると、その主張の根拠となった1950年代の知見の中には、その後の研究で疑問符が付けられたものも存在する。例えばDDTは当時は発ガン性があるとする意見が多かったが、過去数十年にわたる追跡調査があるにもかかわらず、現在に至ってもDDTの人間に対する発ガン性は発見されていない。よって人間に関する限りDDTの発ガン性はなしと考えられている。またアメリカではオスの
ワニが生まれなくなっており、これは農薬のためではないかという指摘がなされているが、ワニの
卵は
温度によって
性別が決まる性質を持っている事を著者は知らなかった。
また本書がDDTの世界的な禁止運動のきっかけとなった点についても、
マラリア撲滅という視点から見ると後世に悪影響を与えたのではないかという指摘も存在している。DDTを使ったマラリアの予防は屋内、特に子供のベッドにDDTを散布し屋内感染を防ぐというもので、この予防法に対する先進国からの援助が打ち切られ、マラリアに対する死亡者が途上国で増加したと批判されている。一方で安価な殺虫剤であるDDTの田畑での農薬としての使用は途上国では最近までほとんど減少しなかった。このため猛禽類や水棲生物の減少による生態系破壊はそのままで、DDTに耐性を持つ蚊の増加をふやす結果となった。