日本の自転車 wikipedia|無料辞書
◆ 日本での自転車の歴史
彦根藩士の平石久平次時光(ひらいし くへいじ ときみつ)の記した『新製陸舟奔車之記』によると、彼は
1732年に
新製陸舟車という三輪の乗り物を製作して走らせたという。これは、ペダル式自転車に相当する乗り物として現時点で知られている世界初のものといえるが、残っているのはこの書物による記録のみである。このため新製陸舟車は個人的なものにとどまったと考えられる。
日本に自転車が初めて持ち込まれたのは
慶応年間で、ミショー型(
ベロシペード)であったと推定されているが、ほとんど記録がなく詳細は不明である。この形式は、イギリスでボーンシェーカー(Boneshaker, 背骨ゆすり)とも呼ばれた。なお以前は
1870年(
明治3年)に持ち込まれたとの説が定説とされてきたが、1980年代頃に否定されるようになった。日本での自転車製作も
明治維新前後には始まっていたものと見られている。からくり儀右衛門の異名をもつ
田中久重が、
1868年(
明治元年)頃、自転車を製造したとの記録が残っている。ただし現物や本人による記録は伝わっていないため、田中久重による製造の真偽は定かでない。初期の日本国産自転車の製造には、車大工や鉄砲鍛冶の技術が活かされた。
1870年、東京・南八丁堀5丁目の竹内寅次郎という彫刻職人が、「自転車」と名付けた三輪の車(ラントン型と考えられている)について、4月29日付の願書で東京府に製造・販売の許可を求めた。この願書は「自転車」という言葉の最古の使用例とされ、東京都公文書館に保存されている「庚午府治類纂」舟車之部という文書綴りに収められている。東京府の担当官による実地運転を経て、5月に許可が下り、7月には日本初の自転車取締規則が制定された[齊藤俊彦『くるまたちの社会史 : 人力車から自動車まで』中公新書1346 中央公論社、1997年 ISBN 4121013468 78ページ]。
1872年(明治5年)、横浜・元町でボーンシェーカー型木製自転車を作った貸自転車業者が、自ら東京〜横浜間を6時間で走ったとの記録がある。これは日本における貸自転車と自転車の走行に関する最古の記録と考えられる。
1876年(明治9年)、福島県伊達郡谷地村(現
桑折町)の初代鈴木三元が「三元車」という前二輪の三輪自転車を開発した。その後も改良を重ね、一応の完成を見た
1881年(明治14年)、第2回
内国勧業博覧会に出品している。現在トヨタテクノミュージアム産業技術記念館に収蔵されている初期型の一人乗り三元車が、日本に現存する最古の国産自転車であるといわれる。三元車は、部品の材質が異なるものの、1879年ヨーロッパで発明されたシンガー・トライシクルによく似た機構を有している 。
現在の自転車の原形である
安全型自転車ができあがったのは19世紀末期で、この時期に日本への輸入も始まっている。国産化も早く進み、宮田製銃所(
宮田工業の前身)が国産第1号を製作したのは
1890年(明治23年)である。
初期の自転車は高価な遊び道具であった。特に
オーディナリー型が主流であった頃、庶民の間では貸自転車を利用することが流行し、度々危険な運転が批判された。所有できるのは長らく富裕層に限られた。
1898年(明治31年)11月、東京・上野不忍池のほとりで開かれた「内外連合自転車競走運動会」を皮切りとして
自転車競技大会も開かれ、大変な人気を集めたという。また、当時一般的であったダイヤモンドフレームの自転車はスカートなどで乗るのに適さなかったため、自転車は男性の乗り物とされていた。しかし
大正期からは富裕層の婦人による自転車倶楽部も結成されるなどし、女性の社会進出の象徴となった。
初め日本の自転車市場はアメリカからの輸入車が大部分を占めていたが、明治末期になるとイギリス車が急増した。この後
第一次世界大戦により輸入が途絶えたことをきっかけに、国産化が急激に進んだ。このとき規格や形式の大部分でイギリスの
ロードスターを基にしたが、米1俵(60キログラム)程度の小形荷物の運搬用途や日本人の体格を考慮したことで一つの様式が確立し、日本独特の
実用車が現れた。なおこの頃の日本の道路は自動車の走行に適してはいないため、運搬に自転車が使われ、自転車で運べない大きな荷物は荷車(特に馬力によるもの)で運ばれることが多かった。まだ自転車の価格が大学初任給を上回り、家財・耐久消費財といった位置ではあるものの、庶民の手にも入るようになり、第二次世界大戦後の1960年代半ば頃まで、実用車は日本の自転車の主流であり続けた。
第二次世界大戦後、自転車が普及していくと、代わりにそのステータスシンボルとしての地位を
自動車が占めるようになった。その後、
高度成長期には日本の自転車輸出量は世界一となり、世界中で日本製の自転車が乗られていた。現在では円が強くなったことで自転車の輸出は激減し、
台湾製を主とした外国製自転車が日本の市場に多数出回っている。2005年現在、自転車の輸出量は台湾が世界一である。
◆ 名称異称
「自転車」という名称の使用は、1870年(明治3年)にまで遡ることができる。この言葉が定着するまでには、「西洋車」、「一(壱)人車」、「自在車」、「自輪車」、「のっきり車」といった名称が錦絵などに残っている。
日本語では漢字「
輪」に自転車を表す用法がある。自転車自体を指す
銀輪、
双輪のほか、「
駐輪場(自転車駐車場)」、「輪界(自転車界、自転車業界、競輪界)」などといった用例がある。「輪」は“cycle”に対する訳語であると考えられる。
1893年(明治26年)には自転車クラブ「日本輪友会」が発足し、
1896年(明治29年)に発行された渡辺修二郎著『自転車術』という解説書では、自転車を「輪」と呼び、いくつかの関連用語の和訳にこの字を使っている。
俗語で「
チャリンコ」と呼ばれることが多い。語源は諸説ありはっきりしない。朝鮮語済州島方言の自転車「チャルンケ」からきたという説、ベルの「チャリン」という音からきたという説、もともと子どものスリを意味していたのが自転車の意味に転化したとする説が知られる。省略した「
チャリ」は単独で使われるほか、造語力が強く多くの語を生み出している。「チャリンコ」やその派生語は、愛称として親しみを込めて使う人がいる一方で、自転車に対する蔑称またはなんらかの差別語として忌避・拒否する愛好家・関係者も存在し、万人に受け入れられる言葉とはいえない。名古屋周辺では、
新方言で「
ケッタ(マシン)」などとも呼ばれている。ほかに「
ジテンコ」、「
ワッパ」などの呼び方がある。
バイクは、日本語ではモーターサイクル(
自動二輪車と
原動機付自転車)を指す場合が一般的だが、英語圏で bike は自転車を指す。日本でも特に愛好家の間でスポーツ自転車をバイクと呼び、車種や関連用品の名称に使われることもある。
◆ 自転車の定義
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